第4回 空間の質と住まい手の満足度を高める「家具」提案
まず家具についてですが、当社では、6年ほど前から、住宅 と家具の一体提案を行っています。きっかけは、住宅を建てさせていただいたお客様のもとへ、定期点検などで訪問させていただいたときに、家の雰囲気とマッチしていない家具が置かれている空間を、とても残念に思ったことです。せっかくの素敵 な家が持つ魅力が、空間に合わない家具の存在によって損なわれてしまっていると感じると同時に、「これはお客様のせいではなく、きちんと家具まで提案できていない自分たちの責任だ」 と強く感じました。 そんな思いを形にし、実践していくため、「KHEIR(ケイ ル)」にカフェ・レストランとともに、家具やインテリア、グ リーンを提案・販売するライフスタイルショップも併設したの です。ケイル内のショップには、量販店や地元の家具屋さんなどではあまり取り扱っていない、おしゃれで特徴的な家具を展 示してあります。また、インテリアとあわせて住空間をイメー ジできるような空間構成にし、来店されたお客様が暮らしやラ イフスタイルを意識するような見せ方をしています。カフェ・ レストランとあわせて、ライフスタイルショップとして一般来 店がおかげさまで非常に増えておりますが、一番の特徴は、当 社で家づくりをしてくださるお客様が実際に家具を見て、暮らしをイメージしながら、家具を選ぶことができるということで す。このお店が、当社の住宅事業の大きな武器となっているの です。 現在、当社の住宅プランの提案では、図面に家具も描き込み、 内装を選ぶ段階で必ず家具も配置してパース図を見ていただく ようにしています。造作家具の加工や、家具のリサイズ・メン テナンスを行う専用の工場も持っていて、住宅の空間に合わせて家具を加工するなど、トー タルコーディネートを徹底し ています。住宅を建ててくださったお客様に対し、住宅と 同様、家具についても永続的 なメンテナンスをさせていた だきます。お客様の家族構成 の変化や、それに伴うリフォームなどの際に発生する家具 の買い換えニーズも自社で対応します。 いま、ハウスメーカーが家具付き提案を積極的に行ってきて います。これは、住宅の新築需要が落ち込む中で、1棟の受注 単価を引き上げようという意図が明確な戦略だと私はとらえて います。今後、ハウスメーカーによる家具付きの提案は、さら に広がっていくと見ています。われわれの主眼は、あくまで住 空間のトータルコーディネートによるクオリティーアップとお客様の暮らしの満足度の最大化ですが、こうしたハウスメーカーの戦略は頭に入れておくことが必要だと思っています。 もちろん、ケイルで取り扱っている家具やインテリアに興味を持ってくれたお客様が当社の家づくりにも興味を持ってくれるといった流れも期待しています。そういった意味でも住宅と 取り扱っている家具は、デザインやセンスなどの面である程度 統一感がなければいけません。うまく統一感を生み出すことが できれば、家具やインテリアが、住宅のブランドイメージの浸 透を補強し、場合によっては家づくりの入り口としての役割を 担ってくれる可能性もあります。
トータルコーディネートは責務
住宅を建てられたお客様が家具屋さんに家具を買いに行った 時、これは仕方のないことですが、家具屋さんは「家具を売る こと」がメインの仕事ですから、お客様の好みや予算について は聞きますが、本来は、それらと同じくらい大切である住宅の 雰囲気や部屋のサイズ・形状、内装の質感、家族の年齢や構成 などについてはあまり詳細には聞きません。まして量販店など で買いそろえるとなったら、ほぼお客様がご自身の判断で好み と予算に応じたものを購入するというのが実情でしょう。
これでは、本当に居心地のいい空間はできません。単なるハコ(住宅)ではなく、暮らし(ライフスタイル)を提案し、そこで家族が物語(ストーリー)育んでいくのをお手伝いすることを理念として掲げる企業として、そして建築のプロとして、この状況を見過ごしていてはいけない、トータルでコーディネートした空間を提供するべきだと思い至りました。それこそが 最大の顧客満足だと考えたのです。
必ず家具込みのプランを提示
1棟単価向上は検討すべきテーマ
私は、地域工務店にとっても、受注単価の向上は、お客様の 満足の向上という観点からも前向きに取り組むべきテーマだと 考えています。実際に当社では、新築の仕事のほとんどを家具付きで提案していて、例えば1棟あたりの家具の総価格が約100万円とすると、1棟あたりの単価がアップするだけでなく、 20棟では家具だけで2000万円となりますから、そうなると 今度は、売上の一つの柱と言える数字になってきます。それだけではなく、家具店として実店舗を構えていることなどもあり、 当社では、ほかのビルダーさんに対して、取り扱っている家具 を、ある程度のロットで販売させていただくなど、家具事業単 体としての強化とレベルアップも目指しています。」
家具が家づくりの入り口になる
また、家具の加工などは技術的には難しいかもしれませんが、 当社もそうですが、もともと造作家具を手掛ける技術力のある 工務店さんは多いというのもありますし、木を取り扱うという 部分でも親和性は高いと感じています。こういった技術を生か した家具提案は、例えばハウスメーカーの主導によって住宅と 家具の一体提案がある程度広がった場合でも、むしろ「工務店 ならでは」の差別化ポイントになると見ています。ハウスメー カーなどでは一体提案といっても、ある程度パターン化せざる を得ないからです。いまからでも何らかの形で住宅と家具を一 体的に提案できる体制を整えておくべきだと考えています。
次回は、生涯顧客化の起点にもなるウェディングプロデュース事業について解説します。